35、仮面をかぶる女性とは
まだ、戦後間もない頃でしょうか、ある映画が大ヒットしました。
比佐芳武原作の「多羅尾坂内・七つの顔を持つ男」。
主演の片岡知恵蔵が七変化の活躍を見せるドラマ。
で、そのクライマックスのキメ台詞である
「ある時は~~、またある時は~~、しかしてその実体は~~」
は、今日で言うところの流行語ともなりました。
それこそ、大人から子どもたちまでマネして喜んでいたもの。
ただ、本来、人は誰しもいくつもの仮面をぶるもの。
だれもが、いくつかの顔を持っているものかもしれません。
しかも、それが女性となると、
面をかぶる巧みさは男性の比ではないとも言えそうです。
普段はガサツ、もしくはガサツ気味な女性。それがある日突然、
シットリと落ち着いた女性へと変貌を遂げる。
見事な仮面をかぶる。そんな場面に遭遇なさったことはありませんか。
それは一つには、自分が置かれた環境の変化に対応したものとも取れます。
逆に、自分が変わることによって、
満足のいかない環境を変えようとしているものとも取れます。
ともあれ、一人の人間が生きていくためには、
時として、さまざまな仮面をかぶる場面があるもの。
そして、それはその人間の適応力というもの。
時と場面により、また必要により、
その仮面は「ネコかぶる」場合もあれば、
「トラをかぶる」こともあるのです。
そんな一方で、これが人という生き物の不思議なところですが、
自分がかぶった仮面によって、そのままの自分が作られるということも。
つまり、仮面が本当の自分の顔となってしまうということです。
ガサツだった女性に彼氏ができて、突然、お淑やかな女性の仮面をかぶる。
すると、そのかぶったお面のままに、本当にお淑やかな女性が出来あがってしまう。
そして、いつしかそれが仮面ではなく本当の自分となってしまうということです。
そんな仮面をかぶる女性。そんな女性であれば、
良き恋愛相手として良き妻としの仮面をかぶり、
いつしかそれがその女性の、真の姿となってくれるのではないでしょうか。
それはすなわち、その女性の成長と呼ぶことにしたいのです。